つい先日、仕事がひと段落したタイミングでコンビニに行った。
確か14:00前くらいだっただろうか。
時間的にそして感覚的に、お昼ご飯というよりかは、おやつを求めて近くのセブンイレブンへ入った。
甘い物が好きなぼくは、無意識のうちにスイーツコーナーにいた。
その時たまたま、陳列されていたまるごとバナナと“目が合った”気がした。
たまにないだろうか、なんかビビッと来る感じ。
セブンイレブンにまるごとバナナが置いてあったんだ、という驚きの感情もあった。
「お前、ここおったんか」って。
そしてまるごとバナナ的にも、ぼくのことを見ていたと思う。
ここで言っておきたいのが、ぼくは別にまるごとバナナに対してそれまで特別な感情を抱いていたわけではないということ。
特に好きでも嫌いでもない。
年に2本食えれば、その年は上出来だ。
ぼくとまるごとバナナは、極めてフラットな関係性にあった。
あった、というか今もそうだ。
にもかかわらず、この日はまるごとバナナと目が合った。
まるごとバナナにビビッと来た。
いや、これまでフラットな関係性にあった我々だからこそ、ビビッと来たものがあったのかもしれない。
ぼくは躊躇うことなくまるごとバナナを手に取り、そして缶コーヒーとともにレジへ向かった。
缶コーヒーといっても、キャップが閉まるタイプの缶コーヒー。
タリーズのブラックがお気に入り。あれは美味い。
まるごとバナナとタリーズの缶コーヒーを、レジの店員さんに差し出す。
ぼくはそれから左に半歩ずれ、レジの正面に立ち、nanacoで支払いするタイミングをぼーっと待っていた。
すると、店員さんが思わぬ言葉をかけて来た。
「スプーンとフォーク、どちらをお付けしますか?」
ぼくは完全に不意を突かれた。
ぼくが買ったのは、まるごとバナナとタリーズの缶コーヒー。
タリーズの缶コーヒーにスプーンとフォークは必要ない。
つまり、そう。
まるごとバナナに、「スプーンとフォークどちらをお付けしますか?」という問いを与えられたのである。
その瞬間まで、まるごとバナナにスプーンやフォークを使うという概念がなかったぼくは、(リアルに)2秒ほど言葉を詰まらせた。
なんせまるごとバナナは、ダイレクトにかぶりつくものだと思っていたから。
2秒ほど、ぼくは頭をフル回転させた。
まるごとバナナをスプーンで食べるべきか。はたまたフォークで食べるべきか。
この時ほど頭を働かせた2秒はない。
そしてぼくは、少々焦りながらもなんとか結論を出した。
「ぇ…ぁ…スプーンで!」
ぼくは、スプーンを選んだ。
すかさず店員さんが
「かしこまりました。」
と言ってくれ、なんとか事なきを得た。
ぼくは、そっと胸をなでおろした。
しかし事務所までの帰り道、ぼくはなんだかモヤモヤしていた。
「スプーンという決断は正しかったのか…」
「ひょっとしたらフォークの方が食べやすかったのかもしれない…」
「いや、そもそもまるごとバナナに“スプーン?orフォーク?”て…」
「てかコンビニにまるごとバナナあったんだな…」
さまざまな思いが渦巻く中、ぼくは事務所に着いた。
小腹の減り具合もピークに達し、ついにまるごとバナナを食べる時が来た。
いつもは(いつもと言うほど食べないが)片方しか開けないフィルムを両サイドから開け、皿のごとくテーブルに広げた。
そして、2秒ほど必死で考え抜いた末に選んだスプーンで、まるごとバナナに切り込んでいく。
まず末端の、バナナがないホイップクリームがいっぱいの部分。
美味い。
スポンジとホイップクリームが奏でる絶妙な舌触り。
ホイップクリームが大好きなぼくにとって、実はまるごとバナナで一番好きな部分である。
曲で言ったら、サビにあたる部分。
出だしからサビで始まるタイプの曲である。
イントロも2小節ほどだろう。
さてそして、バナナを食べる。
2秒ほど必死で考え抜いた末に選んだスプーンを縦に使い、バナナに襲いかかる。
「…ん。」
満足にバナナを切ることができない。
ぼくは、スプーンの素材まで計算していなかった。
コンビニのスプーンといえば、もちろんプラスチックだ。
プラスチックのスプーンでは、バナナが頑丈すぎた。
スプーンの圧力を横へ逃がす余裕を感じた。
結果的に、コンビニのスプーンでまるごとバナナは食べづらかった。
プラスチックならば、おそらくフォークでも食べづらかっただろう。
まるごとバナナを食べる上で重要なのは、素材だ。
鉄やステンレスのスプーンならば、満足に食べられていただろう。
しかしプラスチックのそれでは、バナナはあまりにも頑丈すぎたのである。
結局ぼくは、ダイレクトにかぶりついて食べた。
いわゆるダイレクトアタックだ。
今後、コンビニでまるごとバナナを買う際には注意していただきたい。
ひょっとしたら、箸がベストなのかもしれない。
最後に一言。
まるごとバナナって、スイーツコーナーにあれど、7割バナナみたいな感覚があるから、身体を気にしながらスイーツを食べた時の罪悪感が比較的小さくて済むのが、良いよね